「リクルートは諦めたら終わり!」
29年越しの国際化戦略と、
ものづくりへの熱き情熱

榎本機工株式会社 代表取締役
榎本 良夫 様
【プロフィール】
創業者から3代目。明星大学理工学部機械工学科を卒業し、助手を経て1978年入社。1988年から社長を務める。機械加工・組立・設計開発・営業を経験してきたので現場第一主義。「ものづくり技術」の伝承と人材育成は両輪として、若い人材を多数育てている。製品の50%以上は輸出で、海外見本市出展による海外展開を1994年から積極的に取り組み、新製品の販売に注力してきた。すでに自身で50カ国以上を訪問し、商談の先鞭をつけている。趣味は読書で、視野を広げるには読書が最適と社員にも2ヶ月に1冊は本を読む様推奨している。-
独自路線で生き残る特殊なスクリュープレス機械を製造
榎本機工は、多くの企業が撤退した特殊なスクリュープレス機械の製造に特化し、競争の激しい市場で生き残ってきました。年間製造台数はわずか10台程度ですが、一台ごとの価値は非常に高く、長寿命であることが最大の特長です。
「すぐに壊れない」品質ゆえに買い替え需要が少ないという課題もありますが、この高品質が海外での販路拡大につながっています。例えば、スイスでは同業他社が廃業したことで、榎本機工の製品が唯一の選択肢となり、時計や自動車部品、さらには切れ味が衰えない爪切りまで、世界のものづくりを支えています。
スクリュープレスとは
ネジ機構により力を出すプレス機械で、一般的なクランク機構のプレスや油圧プレスとは異なった機構のプレスです。どこの工場にもある「万力」もスクリュープレスの一種と言えますが、スクリュープレスでは何千トンの力を一瞬に発生させる大きな機械もあり、主に鉄を1000度近くに加熱してから金型の中に入れスクリュープレスで加圧し歯車などを成型します。この工法は一般に「熱間鍛造」と呼ばれています。弥生時代後期からある「鍛冶屋」の現代版です。昔の鍛冶屋さんの製品は鋤鍬(すき、くわ)などの農機具や、日本刀を代表とする武具でしたが、現在熱間鍛造で製造される部品は自動車、二輪、船などのエンジン部品、足回り部品、歯車部品や、ボルト、腕時計、記念メダルなどです。現在スクリュープレスはサーボモーター駆動化され、消耗部品であるブレーキやクラッチが無くなると共にスライドの減速と停止時には回生電力を発電し、省エネ機械に生まれ変わりました。
ZES型100~4000TON・サーボモーター駆動・スクリュープレス
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パイオニアとして切り拓く海外市場
早くから海外に目を向け、ブラジル、ヨーロッパ、米国、インドなど世界各地で販路を開拓してきました。「メールだけでは商談は進まない」という信念のもと、自ら現地に足を運び、トップ交渉で即決するスタイルを貫いています。
他国製品の2倍以上の価格でも、顧客が榎本機工を選ぶ理由は品質と信頼。こうしたフットワークの軽さと直接対話を重視する姿勢が、口コミやウェブを通じて世界中に顧客が広がっている理由だと思います。 -
日本の「ものづくり」を守り抜く使命
私が最も大切にしているのは「ものづくりの精神」です。「日本の源流はものづくりにある。この技術を失えば日本は成り立たない」という強い信念を持ち、製造業の重要性を訴え続けています。
榎本機工の機械は省エネ認定を受けており、省エネ認定機械を選ぶことで、購入者は補助金や税制優遇の対象となり、導入コストを抑えることができます。こうした取り組みは、社会全体の効率化にも貢献しています。 -
国内雇用難を国際化のチャンスに
外国人材の受け入れを始めたのは1995年。国内雇用難を逆手に取り、グローバル化への一歩を踏み出しました。私は英語が苦手だった若い頃から「行ってやるか」の精神で海外市場を開拓し、現地でコネクションを築いてきました。その挑戦は今も続いています。 -
採用基準は「ものづくりが好きかどうか」
外国人材採用で最も重視するのは「ものづくりが好きかどうか」。面談では直感を大切に、相手のこれまでの経験や反応を見極めます。
社内では「ものづくりコンテスト」を開催し、社員同士が技術を共有する文化を醸成。外国人材には「仲良く仕事をし、海外展開にもプラスになるように」と事前に伝え、採用活動を進めてきました。 -
現場で生まれるポジティブな変化
現在、外国人社員は機械加工や組み立て、溶接を担当し、今後は設計開発への異動も予定されています。さらに、彼らが講師となり、週1回の英語学習を社内で実施。語学力の向上に加え、社員の国際感覚も高まりました。休日には、一緒にイベントに参加したり、遊びに行くなど、交流も活発です。 -
「国際企業」を目指す未来とは
受け入れる国のバリエーションを増やしたいと考えています。
ものづくりを愛する人材を積極的に採用し、日本の技術を世界へ広げることが目標です。元社員が海外展開の架け橋となる事例も増えており、システム全体をグローバルに販売する国際企業への道を着実に歩んでいます。 -
外国人採用を検討している企業へのメッセージ
リクルートを諦めた時が会社の終わりです。日本人でも外国人でも、性別も関係なく「ものづくりが好きな人材」を積極的に受け入れる努力はいずれ、会社の発展につながります。人材がいなければ会社は成り立たない。可能性があるなら種を撒くべきです。
【会社概要】
- 会 社 名
- 榎本機工株式会社
- 所 在 地
- 神奈川県相模原市緑区町屋1-1-5
- 創 業
- 1910年
- 事業内容
- 鍛造用スクリュープレス機の製造・販売を主たる事業とし、サーボモーター駆動スクリュープレスにおいては国内唯一のメーカーとして世界トップクラスの技術力を誇る。
- 従業員数
- 40名
- 外国人社員雇用人数
- インドネシア 6名、パプアニューギニア2名、バングラデシュ1名、インド1名(予定)
- 企業URL
- https://www.enomt.co.jp
2025年12月5日現在



